カバーコラム 叔父さんのビニールハウス [DINING EXPRESS誌より]
■ダイニング・エクスプレス VOL.6のカバーコラムより
実家に帰る途中、車の窓からは、強い日差しに反射してキラキラ光るビニールハウスを数多く見かけることが出来る。この風景を見るたびに叔父とトマトのことを思い出す。
子供の頃、叔父のビニールハウスにひとつ年上の姉とよく足を運んだものだ。これといって手伝いをするわけではないのだが、外気と違う、ハウス独特の空気を感じ、叔父たちが働く様子を見るのが大好きだったからである。
ハウスの中は、トマトの甘酸っぱい香りが満ち溢れている。輝くようなグリーンのトマトが、太陽のように真っ赤に熟していく日々の様子をハウスの入り口の小さな椅子に座り、祖母が食事の時間を伝えてくれるまで暑さも忘れ眺めていたものだ。大きなトマトや、少し虫が喰ったトマト、真っ赤に熟れたトマト。出荷の準備が進んでいくと市場には出せなかった”不揃い”のトマトを叔父がザルに入れて私の家の勝手口まで持ってきてくれた。
別の畑で祖母が作った「シャキシャキのキャベツ」と「みずみずしいキュウリ」、水の中でよく冷やした「とっておきのもぎたてトマト」を一緒にサラダにして頂くのが私の大好きな食べ方だ。野菜本来の甘みが満ち溢れておりドレッシングなど必要ない。いくらでも食べることが出来る。また、薄くスライスしてオリーブオイルと塩コショウでシンプルに食べたり、パスタに和えたりと私の料理には欠かせない。
イタリア料理の素材としてのトマトが新参者であることは、あまり知られていない。南米からヨーロッパに伝わったのは16世紀。その後、トマトはイタリア料理の赤い革命と呼ばれ、さまざまな料理に利用されるようになったそうだ。甘みと酸味のバランスの良さ。完熟させることで果肉の甘みが増し、ゼリー部分の酸味がうま味へと変わっていく。トマトはどんな料理の主役にもなれる最高の野菜だ。
<K・H>
Posted at 05時25分
トラックバック
トラックバックURL
http://www.howdy.co.jp/dining-express/tb.php?ID=236